AIに仮説を考えてもらう使い方

売上減少や集客不振の原因を、自分の経験だけで決めつけていませんか。
生成AIは正解を求めるだけでなく、多様な仮説を考える相手としても役立ちます。
食品メーカーや飲食店の事例をもとに、AIから新しい視点を引き出す質問のコツと、仮説を検証して改善につなげる方法を紹介します。
●本記事は、同内容を音声配信でもお届けしていますので、耳で聞きたい方はそちらからもどうぞ。
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※プロンプトのテンプレートは最下段にあります。
課題解決は原因を正しく特定することから
さて、ビジネス上の課題、問題が発生したとき、その解決策を考える前に、そもそも何が原因なのかを突き止めないと、有効な対策を打てません。
たとえば売上が落ちた。お客さんが減った。新商品が思ったほど売れない。
そんなとき、「値段が高いからだ」「景気が悪いから仕方ない」と、最初に思いついた原因で決めつけてしまうことがあります。
実際に値段を下げたのに売上が戻らなければ、値下げした分だけ利益が減るだけで、問題は解決しません。原因の見当違いは、対策の見当違いにつながってしまいます。
そこで本記事では、生成AIのひと味違う活用法をご紹介します。それは、AIに正解を教えてもらうことではなくて、「仮説」を出してもらう使い方です。
この原因となる仮説を導き出す方法、大学で授業をしていても、食いつきのいい項目なんです。というのも、仮説を考えだすことが、優秀な人でも結構むずかしいのです。
そもそも人間は、自分の知っていることや過去の経験に引っ張られやすいものですから、
以前、値下げをして売上を伸ばした経験があると、今回も価格で問題解決できるだろうと考えたりします。
営業担当者なら営業方法、製造担当者なら品質や材料に目が向いていて、その中で解決できる、解決しよう、と考えてしまいがちです。
行動経済学では、自分が正しいと思う情報ばかり集めてしまう傾向を確証バイアスと呼びます。経験は大切ですが、経験があるからこそ見落とす可能性もあるわけです。
AIに仮説を考えてもらう方法
では、AIをどのように使うか、です。
例えば、食品添加物のメーカーで、ある品目の売上が前年より20%下がったとしましょう。経営者は「競合の安売りが原因だ」と考えています。
ここでAIに「売上が下がったのはなぜですか」とだけ聞いても、一般的な答えが返ってくるだけですよね。
そうではなく、こんなふうに質問します。
「食品添加物をつくっている食品メーカーです。ステアリン酸カルシウムの売上が、前年比20%減少しました。考えられる原因を、顧客、競合、市場環境、営業活動、製品やサービスの5つの視点から、それぞれ3つずつ挙げてください。現時点では原因はわかっていません」
すると、15個の仮説が並びます。
例えば、主要顧客の生産量が減ったのではないか。依存度が高い特定の業界で構造的変化があったのではないか。競合が短納期対応を始めたのではないか。見積もりの回答が遅くなっていたのではないか。小ロット注文が増え、受注額が下がっていないか。などなど
もちろん、これらは事実ではなく、あくまでも仮説です。しかし、「競合が安いから」という一つの見方しかなかったところに、別の角度から問いを立てられるようになりますよ。
そうしたら、次の2段階目に進みます。
「この15の仮説について、確認すべき社内データと、顧客に聞くべき質問を考えてください。さらに、影響が大きそうで、比較的早く検証できるものを優先してください」とAIにお願いします。
すると、例えば、前年と今年の顧客別売上を比べる。見積もり件数と受注率の変化を調べる。失注したお客さんに、価格と納期のどちらが問題だったかを尋ねる、といった確認方法が出てきます。
ただし、データがない段階でAIが付ける優先順位も推測です。鵜呑みにせず、社内事情に照らして決める必要があります。
そして、調べてみたら、実は受注率は変わっておらず、最大顧客からの注文量だけが大きく減っていた、とわかったとします。
そうであれば、値下げをするより、販路を広げて特定の顧客への依存を減らすほうが、筋のよい対策かもしれません。こうして、仮説を出し、事実で確かめることで、対策の精度が上がるのです。
応用範囲は、もっと広くあります。別の参考例を見てみましょう。
例えば飲食店で、リピーターが減っている場合。
店主は「最近の若い人は飽きっぽいからなぁ」と思っているかもしれません。
しかしAIに尋ねれば、料理の味つけや価格だけでなく、営業時間が生活習慣と合わなくなった、食券の買い方や注文方法が面倒、近隣に新しい店ができた、など別の可能性も挙げられます。
新商品が売れない場合なら、商品そのものが悪いとは限りません。用途が伝わっていない、売場の棚が違う、買うべき人に情報が届いていない、といった仮説もあるでしょう。
展示会がうまくいかなかったら、「出展ブースの位置が悪かった」と片づける前に、掲示していたキャッチコピー、キービジュアル、事前告知、来場者に伝える価値など、いくつもの角度で考えることができます。
AIによる仮説立案・3つのTIPs
では、AIから役立つ仮説を引き出すコツを、3つお伝えします。
一つ目は、状況を具体的に伝えること。
業種、商品の特徴、顧客層、何がどれくらい変わったか。わかっている事実と、自分の推測を分けて書きます。
二つ目は、視点を分けること。
「原因を考えて」だけではなく、「顧客、競合、商品、販売方法から考えて」と頼むのです。
そして三つ目。
「私は値段が高いことが原因だと考えています。この考えが間違っているとしたら、どんな可能性がありますか」と質問してください。
自分の意見に賛成してくれる相手よりも、見落としを指摘してくれる相手のほうが、問題解決には役立つはずです。
ただし、AIはもっともらしい間違いも答えます。架空の事情を事実のように扱っていないか、注意が必要です。また、顧客名や社外秘の売上データなどを、会社のルールを確認せず入力しないようにしましょう。
さて、AIには経営判断を丸投げするのではなく、仮説を幅広く出すことを手伝ってもらうわけです。データや顧客の声で検証するのは人間です。そして、どの対策を実行するかを決めるのも人間です。
AIが教えてくれた答えを信じるのではなく、AIが投げかける仮説によって、早く正解に辿り着けるわけです。
マーケティングは、仮説を立て、確かめ、改善する仕事でもありますが、そこでAIに助けてもらう。AIは答えも出すけれど、自分では思いつかなかった問いも見つけてくれる、ということです。
●今回のAIに仮説を出してもらうための「プロンプトのテンプレート」を、弓削徹のウェブサイトのコラムに、今日の本文と一緒に貼っておきますので、必要かなと思った方は、「弓削徹 ウェブサイト」で検索してチェックしてみてください。
AIに課題解決の仮説を出してもらうための実践プロンプト
・私は[〜業種・事業内容〜]の仕事をしています。現在、[〜発生している問題〜]で困っています。
考えられる原因を、顧客・競合・市場環境・商品・販売方法の5つの視点から、それぞれ3つずつ挙げてください。(市場環境、営業活動、製品・サービス、海外動向なども)
・私が見落としている可能性も考えてください。
・さらに、それぞれの仮説を確かめる具体的な方法を提案してください。
・事実として確認できないことは、必ず仮説であると明示してください。
製造業マーケター、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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