相談事例に学ぶ…ケーススタディ②

売れない理由は「中身」ではなく「見せ方」にある
ゼロ円で得たアドバイスの価値はゼロ円
今回も、過去にご相談いただいた案件のなかから、マーケティングの考え方がよく表れている2つのケースをご紹介します。
ところで、その前に。
セミナー終了後や懇親会などで、「ちょっとアドバイスをください」と声をかけられることは少なくありません。
そうした場で無料でお伝えした助言は、内容の良し悪しとは別に、「無料だから」という理由で軽く受け取られてしまうことがあります。
同じ内容でも、顧問料やコンサルティング費用を払って得たアドバイスであれば、「実践しなければもったいない」と感じる人が多いものです。
つまり、ゼロ円で得たアドバイスの価値はゼロ円なのです。
有料、無料を問わず、有効なアドバイスを得たときは、それを実践に移すことが大切です。実際に行動に移せば、そこから利益や成果につながる可能性があることは変わりません。
今回も、そんな実践価値の高い相談事例を2つご紹介します。
事例3 : 高級健康酢が売れないのは価格が高すぎるからではない
最初の事例は、北陸のある会社が販売していた高級健康酢についてのご相談です。
商品そのものは品質が高い。しかし価格が高いために売れにくく、特徴のアピールもうまくいっていない。どうすればよいか、という内容でした。
このケースで必要なのは、商品の中身を変えることではなく、「商品の位置づけ」を変えることです。
その会社は、この商品を「高級なお酢」として売っていました。ですが、そのままでは、消費者にとっては「お酢なのに高い」という印象になりやすい。そこで私は、「高級酢」ではなく「健康ドリンク」として打ち出したほうがよいのではないかと提案しました。

たとえば、お酢として500mlのボトルで売るのではなく、健康ドリンクとして180ml程度の小さめの瓶にする。
すると、販売価格も抑えやすくなり、健康飲料として見たときには、むしろ手に取りやすい価格帯に見えてきます。
つまり、同じ商品でも、「何として売るか」によって、消費者の受け止め方は大きく変わるのです。
さらに、試飲販売の場面でも、ただ味や特徴を説明するだけでは不十分です。まず健康不安や体調への関心を喚起し、そのあとで「なぜこの商品が体によいのか」という裏付けを伝え、最後においしい飲み方を案内する。そうした順番で話したほうが、相手に聞いてもらいやすくなります。
この商品には、たとえば次のような訴求ポイントがありました。
- 巨峰を使っていること
- ビワの葉エキスを配合していること
- 砂糖不使用であること
こうした特長は、単なるスペックとして並べるのではなく、「美容」や「健康」という文脈で整理し直すことで、より魅力が伝わりやすくなります。
また、店舗で販売する以上、売り場で説明してくれる人が常にいるわけではありません。そこで重要になるのがPOPです。販促物の少ない店舗では、POPが“独り歩きする説明員”の役割を果たします。商品の価値や違いを伝える役割を、売り場の紙一枚に担わせる発想が必要です。
さらに、機能性表示食品などの制度活用も検討の余地があります。制度による裏付けが加わることで、表現に説得力が生まれ、商品の信頼性も高まるからです。
事例4 : なぜ売れたのかを知るための「お客様と直接つながる仕組み」
次のご相談は、弁当や惣菜を製造し、スーパーやコンビニに卸しているメーカーからのものでした。
相談内容は、「自社の商品がなぜ売れたのかを知りたい。そのための方法はあるか」というものです。
メーカーが工場で商品をつくり、流通を経て店舗で販売される。この構造では、お客様の声がメーカーに直接届きにくいという問題があります。店頭で出口調査をしようとしても、流通側の許可が必要になったり、人手や費用がかかったりして、現実的にはむずかしいことが多いものです。
そこで私が提案したのは、商品パッケージに二次元コードを付け、小さなプレゼントキャンペーンを実施する方法でした。
購入者にコードからアクセスしてもらい、
「なぜこの商品を買ったのか」
「何に魅力を感じたのか」
を選択式や自由記述で答えてもらう仕組みです。
もちろん、こうしたアンケートですべての本音や深層心理まで分かるとは限りません。マーケティング調査には限界があります。ですが、回答数がある程度集まれば、傾向は見えてきます。
- どんな理由で購入されたのか
- どんな言葉に反応したのか
- 商品によって応募数に差があるのか
そうした情報が蓄積されれば、次の商品開発や販促施策に活かせるヒントになります。
このとき、キャンペーンは大がかりである必要はありません。総額10万円、20万円程度でも十分です。たとえば、デジタルで送れるギフト券やポイントであれば、発送コストもかからず、運用しやすい。抽選で50名、100名に1000円分のギフトを進呈するといった設計でも、応募の動機としては十分に機能します。
大切なのは、メーカーが流通をはさんだ先にいるお客様と、少しでも直接つながる接点を持つことです。
当時はまだ珍しかった発想かもしれませんが、今では実際にこうした取り組みを行っているメーカーも増えています。お客様と“頭越し”にでもつながる仕組みを持つことが、マーケティングの精度を高めるのです。
マーケティングで変えるべきは、商品そのものとは限らない
高級健康酢の事例では、商品の位置づけが変われば、価値の見え方も変わる。
惣菜メーカーの事例では、お客様との接点の持ち方が変われば、売れた理由を知ることができる。
つまり、マーケティングとは、モノを変えることではなく、見せ方、伝え方、つながり方を変えることでもあるのです。
売れないとき、多くの人は「商品に問題があるのでは」と考えがちです。ですが実際には、価値の定義のしかたや、お客様との関係のつくり方に原因があることも少なくありません。
売上を伸ばしたいなら、商品の改良だけに目を向けるのではなく、「どう位置づけるか」「どう伝えるか」「どう声を集めるか」という視点から見直してみることが重要です。そこに、次の一手が見えてくるはずです。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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