倒産の公式がわかった?!

倒産の公式がわかった?!

コロナウイルスの影響で倒産した製造業について、その原因と公式を探る記事です。

 

帝国データバンクによると、新型コロナウイルス関連倒産企業約200社において多数を占める数業種は、「飲食店」(44件)、「ホテル・旅館」(41件)、「アパレル・雑貨小売」(20件)、「食品製造」(18件)、「食品卸」(16件)となっています。

製造業では食品メーカーが入ってしまいましたが、これは飲食店などプロ・業務用の食品を製造していた会社であると思われます。

同様に、倒産負債総額トップ20を見てみましょう。

 

●倒産負債総額ランキング トップ20 <社名/業種>

1 WBFホテル&リゾーツ    ホテル運営受託

2 レナウン          アパレル製品販売

3 エターナルアミューズメント ゲームセンター経営

4 キャスキッドソンジャパン  カバン・雑貨製造販売

5 旭東ホールディングス    持株会社

6 旭東電気          漏電遮断器・ブレーカー製造

7 有楽商事          パチンコホール経営

8 ロイヤルオークリゾート   ホテル経営

9 シティーヒル        婦人服企画販売

10 MJG           接骨院経営

11 赤玉           パチンコホール経営

12 ホテル一萬里       ホテル経営

13 ラビアンローゼ      貸衣装業

14 冨士見荘         旅館経営

15 萬松           自動車内装品製造

16 アイ・ティ・オー・ジャパン 紳士服販売

17 長州観光開発       ホテル経営

18 国際ホテル        ホテル経営

19 バークリープロパティ   不動産賃貸業

20 瑞穂商事         ホテル運営受託
(✳︎出典:ダイヤモンドオンライン)

 

■製造業なのに倒産した要因は何か

 

やはり、ホテルや不動産、サービス業が目立ちますね。

しかし、製造業も数社あるようですので個別に見ていきたいと思います。

まず、2位のレナウンです。

[ダーバン]や[シンプルライフ]などのブランドで一世を風靡した有名企業です。

レ社の売り上げ構成を見ますと、実に55%が百貨店となっています。

これにショッピングモール(11%)や総合スーパー(16%)、アウトレット(5%)などを合計すると87%となり、ECはわずか3%でした。

店頭がなくなると、売上が立たない体質は問題です。

さらに、レ社の親会社は中国企業の山東如意科技集団なのですが、この親会社への売掛金が支払われなかったことで資金繰りができなくなり、倒産に至りました

 

店舗の閉鎖が引き金を引いたという点では、4位のキャスキッドソンジャパンも同様です。

この英国ブランドは、かつてはユナイテッドアローズが国内展開を担っており、その後サンエー・インターナショナルが引き継ぎ、2015年以降は英国本社の日本法人による運営となっていました。

百貨店やショッピングモールの44店舗が売り上げの中心であったことから今回の結果となったようです。

アパレル、SPAでは、EC化が遅れていた会社は厳しいといえます。

 

堅気の企業と思われる6位の旭東電気は、漏電遮断器メーカーであり、とくに洗浄便座用の漏電防止プラグでは98%のシェアというニッチトップ企業

倒産に至った理由としては、中国工場での操業停止で資金繰りが悪化したとされていますが、中国市場での売上にも依存する体質となっていたことも大きいようです。

同社は加賀電子が救済することになった模様です。

もう1社の堅気企業、萬松は、メキシコ、フィリピンなど海外展開による過剰投資の負担が重いところへ、自動車の減産が直撃しての結果かと想像されます。

 

■製造業倒産の公式が見つかった?!

 

製造業での倒産はまだ多くはありませんが、海外展開、とくに中国と関わっている企業は厳しいようです。

製造業で倒産しているところの事情を式で表すと、次のようになるのではないでしょうか。

まぁ、コロナも中国発なのですが、取締役会の席上で誰もリスクを言い出さず、唯々諾々と中国進出に賛成の挙手をする風景が思い浮かびます

その他のアパレル企業では、コロナが息の根を止めたことは事実ですが、すでに経営状況が悪化していた下敷きのある会社が、コロナにとどめを刺されるという印象です。

そういうと、英国バーバリーの契約が切れて窮地に立っているサンヨー商会が次なのではないかという予測も聞かれます。

 

■内部留保していた企業が強かった

 

さて、アクティビスト、いわゆるもの言う投資家の多くが唱えてきた「有効活用できていない資金は株主に分配せよ」という意見があります。

あるいは、経済評論家がよくコメントしていた「現在の日本企業は、内部留保がムダに多すぎる」。

ところが、今回のコロナ危機に強かったのは、結局は内部留保をたっぷり積んでいた企業でした

 

一見、正しそうな経営理論。

これに対して逆張りをしたり、異を唱えることができるのは、センスのある創業一族の経営者だけなのでしょうか。

当たり前を疑う感覚を、日頃から持っていたいものだと思います。

弓削的には、「企業は成長しつづけなければならない」「企業は株主のもの」も否定しておきたいところです。

 

 

製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。

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