中小製造業が待つ経済対策

中小製造業が待つ経済対策

武漢ウイルスの影響により、ビジネスには影響が出ています。

 

ただ、それは売上激減というようなものだけでなく、「大きな声ではいえないけれど好調です」という会社さんも少なくありません。

 

私の支援先企業の担当者に聞き取りしたものを、一部ご紹介します。

食品メーカー……外食を控えている生活者がスーパーで購入するため、B2C寄りの商品は好調

通信機器メーカー……リモートワークの推進により機器類やシステムの売上が好調

建築業・ハウスメーカー……進行中の案件は進むものの、中国生産の設備品が届かず、停滞

建材メーカー……国内工場製品に振り向ける動きで一部、好調。しかし、自社の中国発注部品は届かず、製造ラインに影響

印刷用インキメーカー……食品メーカー、流通向けの印刷物が好調なため、売上は増加

子供向け玩具メーカー……リアル店舗チェンが休止していることもあり、ダイレクト通販が好調

公共施設向けの器具製造……新規案件はないが、計画のものは進行。今後の老朽化更新などは後ろ倒しか

アルコール消毒液製造……当然のことながら、つくればすべて売り切れ

 

私の支援先は製造業のみですので、影響は限定的でムラがあるようです。

ただ、自動車の製造ラインは休止部分も多いため、ここに属するサプライ企業は影響があります。

そして、もちろん飲食を含むサービス業などは、客観的に見て苦境にあるように思われます。

 

今後の市況見通しは?

では今後、自粛が断続的に緩和されていくなかではどのように変化していくでしょうか。

食品や生活必需品などは多少の波はあっても底堅い消費ボリュームがあります。

ただ、飲食店や娯楽施設、人が集まる場所は忌避される傾向が残りますので、通常の売上に戻るには2、3年かかるでしょう。

そうすると、売上が立たないことによって、業態によっては廃業が続出します。

そこへ供給されるはずの物品や建築案件の発注が減少。

社会全体の消費ボリュームが減退しますので、小規模事業所から順に失業者が生み出され、深刻なデフレが到来します。

ところが、物品によっては輸入、生産が滞るため、価格は上昇します。

所得は減少するのに、市場価格は高騰するスタグフレーションになるのです。

 

過去の経済不況はどうだった?

こうした経済状況を招かないためには、経済の血液ともいうべき通貨を潤沢に投入する必要があります。

また、国内生産を推進する投資や助成金なども行なわなければなりません。

つまり、政府による財政政策(公共投資や減税)、日銀による金融政策(金融・量的緩和)の両輪です。

それらが十分に行われた国から立ち直っていくのは、いつもと同じでしょう。

大胆な財政政策をとった中国が、リーマンショックからいち早く立ち直ったのは記憶に新しいところです。

逆に、日本政府と日銀は何もしなかったため、この米国発・不況の影響を最後まで甘受しつづけました。

70円代までの円高が進み、輸出産業は死屍累々となったのです。

 

対策をとらないとどうなる?

米国の武漢ウイルスに対する施策を見ると、適切かつ迅速な処置をとっているように映ります。

今年は大統領選挙がありますので、そこも意識してのことでしょう。

日本も、国債の増発と減税が課題です。

仮に、米国やユーロが貨幣流通量を増やしたとき、日本が同じことをしなければ円高&デフレになります。

輸出がふるわず、外貨を稼ぐこともできなくなり、また日本の一人負けになるでしょう。

中国はインフレ気味なので通貨を刷ったり、金利を下げることがしづらいうえ、世界がチャイナリスクを思い知って取引をしぼるため、日本とともに敗者になるかもしれません。

 

 

なぜ日本は対策をとれない?

日本が負け組にならないためには、国債発行と減税が必要です。

ところが、新聞には「日本は借金大国だから国債発行は将来へのツケまわしだ、国家破綻する」という記事が載っています。

これを額面通り受け取る人のほうが多数派のため、なかなか金融政策が進みません。

たしかに日本は借金大国ですが、世界中に金を貸し付けている貸付大国でもあります。

また、国家のバランスシートで見ると資産と債務はほぼバランスしていることがわかります。

しかも、借金の多くを国の子会社である日銀が引き受けていますので、返済の必要がありません。

 

赤字国債の発行は避けるべき?

借金が将来へのツケまわしだとしても、ここで日本経済がキズついてしまえば、もっと大きな禍根を残すことになります。

仮に10年国債や30年国債を発行して、借り換えを繰り返していけば、返済を負担するのは数十年後、100年後の子孫です。

2%のインフレにできれば、100年後には債務は10分の1くらいの負担感覚になります。

そして、ウイルス禍の苦労を知らない世代が、祖先への感謝を込めて返済してくれるのです。

逆にいま、われわれが積極的な借金財政を展開しなければ、子孫に叱責を受けることでしょう。

「なぜちゃんと対策を取らなかったんだ!」と。

 

いつか日本経済は破綻する?

日本国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ=破綻したときに補償される保険のようなもの)金利は、「100年に1回破綻するかどうか」という水準です。

つまり、世界中の投資家は「円は安全通貨」と認定しているのです。

そうでなければ「有事の円」などと言われ、世界経済が不安定なときに円が買われて通貨高になるはずがないですね。

日本とドイツは真面目な国であり、緊縮財政が基調となっています。

ドイツは経済的に強いにもかかわらず、ユーロ圏のなかでギリシャやイタリア、スペインなどの放埒な国に囲まれてユーロ安を享受。

通貨発行権のないことを逆手にとった繁栄を謳歌してきたのです。

 

最後にお願い

しかし、日本には同様の環境はありません。

中小零細ビジネスは、おカネという血液が欠乏すればすぐに死んでしまいます。

しかし、元気になるために欲する血液の量はそれほど多くはありません。

「Too big too fail」より「small needs small foods」。

国内需要主導の国ではありますが、外貨を稼ぐためには過ぎた円高は致命傷になります。

どうか、今回の武漢ウイルス禍は災害であると受け止めてもらい、政府、日銀の適切な出動を願います。

 

 

※病気の呼び方について

「新型コロナウイルス」呼ばれることが多いようですが、次にまた新型のコロナウイルスが出てきたときに紛らわしくなると思います。

自動車で“コロナの新車”という呼称も、キャンペーン中はいいですが、またモデルチェンジをしたら紛らわしくなりますよね。だから「コロナ・マーク2」と呼んだりしたわけです。

ですので、今後の新型ウイルスと区別するためにも、独自の属性をはっきりとネーミングしたほうがよいと思っています。

そのためには、発生源である地域名称を冠するのがいちばんわかりやすい。
ですので、「武漢ウイルス」と呼ぶべきだと思っています。

 

※現下の状態の呼び方について

「緊急事態宣言」と呼ばれていますよね。

“緊急”というのは「急いで対処しなければならない」という意味だと思います。
だとすると、当初は急ぎますが、あとはそれをつづけていくだけになりますので“緊急”性は前面に出る必要はなくなります。

そういう意味から、これは当初から「非常事態宣言」と呼ぶべきだったのではないかと考えています。
つまり、「非常事態宣言を緊急に発出します」というような。

いまは“非常事態”(通常ではない状態)に違いありませんので。

 

細かくてすみません。

「細かいことが気になってしまうのがボクのわるいクセ」(by 杉下右京)

 

 

製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。

 

本コラムは、ものづくりの現場での気づきや日々の雑感、製造業のマーケティングや販路開拓に関するノウハウなどをお伝えするものです。 お気づきのことやご質問、ご要望などがありましたら、お気軽にメッセージをお寄せください。

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