ネーミングに求められる語感・音相

ネーミングに求められる語感・音相

ヒットするネーミングに欠かせない視点のひとつが語感・音相です。

本記事では、語感や音相を意識したネーミングの作成方法における5つのテクニックについて書いています。

 

●ネーミング作成における語感5つのテクニック

1■無声音より有声音が強い
2■女性は有声音を受け入れやすい
3■語頭を強調するほうがよい
4■子供向け商品は半濁音
5■語尾の母音が全体のイメージを決める

 

さて、日本人の耳は年々、敏感になっているといわれています。

コロナ自粛期間中も、階上・隣室の騒音が我慢ならないとして殺人事件が何件も起きました。

これも、音に対する過敏さが招いた悲劇といえるでしょうか。

 

商品ネーミングにおいて、ピタリとハマる語感、響きを持つものは記憶されやすく、愛されやすい印象を抱きます

もちろん意味性も大切ですが、本記事では音にこだわってみたいと思います。

まず、商品が想定するターゲットによって音相は変えるべき、という論点です。

 

●ネーミングと「音声象徴」の研究

米国では「phonetic symbolism」(音声象徴)と呼び、音のイメージがネーミングやブランドに与える影響について研究が進んでいます

こうした研究報告を下敷きにしますと、男性や男の子向けの商品では有声破裂音である「B、D、G」の入った(とくに語頭)ネーミングがよいと考えられます。

実際のネーミング例でいうと、次のようなものです。

 [ガンダム] [アディダス] [ゴジラ] [ドラゴンボール]

漫才コンビでいうと、[ナイツ]より[ダウンタウン][銀シャリ]というコンビ名のほうがインパクトがありますよね、ネタがおもしろいかどうかは別として。

 

1■無声音より有声音が強い

発音には有声音と無声音があり、ネーミングの語頭に有声音が来るほうがインパクトにつながるとされています。
(有声音は発声時に声帯が振動する音。無声音は発声時に声帯が振動しない音)

有声音=B、D、G、L、M、N、R、V、Z

無声音=C、F、H、K、P、Q、S、T、X
(学術的な分類はもうちょっと繊細ですが、ご容赦ください)

上述の男性向けの商品例にとくに向いている音は、有声音のなかでも破裂音(B、D、G)はなおよい、ということなのです。

有声破裂音が3つも入った「ブルドッグ」と、それを無声音に置き換えた「フルトック」とでは、相当、印象が変わってしまうことがおわかりだと思います。

 

2■女性は有声音を受け入れやすい

一方、女性向けでは破裂音ではない有声音(L、M、N、R、Z)が有効であると考えられます。

実際のネーミング例を挙げます。

[メルカリ] [ZOZO TOWN] [ネットフリックス] 

[リセッシュ] [生茶] [アムラー/安室奈美恵]

もちろん、破裂系の[バスチー]や[午後ティー]、[めぐりズム]もありますね

女性ターゲットの商品であっても、下品な響きのネーミングでなければ、強すぎて困るということにはならないでしょう。

また、とくにN、また「ン」が入ると女性は安心できるという研究もあります。

かつては[ノンノ][アンアン]という人気雑誌もありました

 

3■語頭を強調するほうがよい

語感の印象を大きく決めるのは、語頭(ネーミングの1音目)に置かれた音だといえます。

「ロッポンギ」と「ギロッポン」を口に出してみてください

後者のほうが強く感じたのではないでしょうか。

また、母音(A、E、I、O、U)か子音かという点では、語頭には子音を持って来るほうが強くなります。

[ケント] [エント]

これも、口に出して比較してみてください。

たとえ無声音であっても、母音よりは強調される印象です。

 

4■子供向け商品は半濁音

半濁音とは、Pのパビプペポです。

例を挙げてみます。

[プリキュア] [アンパンマン] [ポッキー]

[タピオカ][スマップ]は女性向きでもあり、子供向きでもあるネーミングであったといえます。

半濁音は語感として軽快でソフトな印象を与えます。

 

5■語尾の母音が全体のイメージを決める

主にネーミングの語尾がどの母音で終わるかによって言葉のイメージが決まりやすいという研究です。

母音がアで終わる → 明るい、強い、元気、発展的、広がりを感じる

母音がイで終わる → 意思が強い、繊細な、感情的な、鋭い、小さい

母音がウで終わる → かわいい、デリケートな、なめらか、唸るような力強さ

母音がエで終わる → 自然な、やさしい、おだやかな、楽しい、横に広がる

母音がオで終わる → 太い、たくましい、安定している、ゆっくり、真っ直ぐ伸びる

 

この法則性を、クルマのネーミング例で検証してみましょう。

・語尾がア  [インスパイア] [アクア]

・語尾がイ  [カムリ] [マーチ]

・語尾がウ  [ウィンダム] [ヴェゼル]

・語尾がエ  [キャバリエ] [ポルテ]

・語尾がオ  [アルファード] [エルグランド]

いかがでしょうか。

これは多分に個人の感性とも関わってきますので、一様ではないかもしれません。

ネーミングには選択の5原則もありますが、下記のように採点していくことで音感という視座からのスコアがどれくらいかという客観的な評価ができそうです

– 語頭に有声破裂音がある  5点

– 語中に有声音が3つある   3点

……などのような

この採点法で巷の商品ネーミングをランクづけすることで、語感と販売実績との間にどれほどの相関関係があるかを調査するのもおもしろいかもしれません。

 

実際のところ、ネーミング作成の過程においてはネーミングコンセプトや意味性を追いかけることが優先され、語感にまで思いをいたすことはむずかしいことも多いと思います。

それでも、余裕のあるときは語感・音相にも気を配っていただければ、せっかくの商品のヒット確率が高まることと思います。

 

 

製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。

 

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