AI時代の買物行動はどうなるのか

 

AIがますます賢くなっていくなか、コンテンツマーケティングによるSEO対策などは受注に対してどれくらい有効なのでしょうか。
そして、来るべきAI優位の時代に、ネットショッピングはどのように変化するのか??
弓削なりの考察を書きます。

 

まず、検索の形態について総括しておきましょう。検索にはいろいろな種類があり、その目的は4〜5くらいのカテゴリーに分類することができます。

 

検索目的のカテゴリー分け

 

 

これらを詳しく見ていきましょう。

1 知る(Know / Informational)

もっとも一般的な目的で、知識や情報を得るための検索
(例)
・事実の確認 :「今日の天気」「富士山の標高」
・方法の習得(How-to): 「ネクタイの結び方」「Excel 関数 使い方」
・問題の解決 : 「お腹が痛い 原因」「スマホ 画面がつかない」
・概念の理解 : 「量子力学とは」「新NISA メリット」
・最新ニュース : 「選挙 速報」「大谷翔平 成績」

 

2 行く(Go / Navigational)

特定の場所(ウェブサイト、または物理的な場所)に到達するための検索
(例)
・特定サイトへのアクセス : 「YouTube」「Amazon ログイン」「Twitter(X)」
・場所の特定 : 「近くのカフェ」「新宿駅 出口」「ディズニーランド 営業時間」
・経路検索 : 「ここから東京駅 行き方」

 

3 する 買いたい/利用したい(Do / Transactional)

具体的なアクション(購入、申し込み、ダウンロードなど)を目的とした検索
(例)
・商品の購入 : 「iPhone16 在庫あり」「水 2L ケース 注文」
・サービスの予約 : 「美容院 予約」「格安航空券 予約」
・資料請求・登録 : 「英会話 資料請求」「Netflix 会員登録」
・ダウンロード : 「zoom インストール」「壁紙 無料 ダウンロード」

 

4 比べる 比較・検討したい(Commercial Investigation)

「買いたい」の直前段階で、どれが良いかを見極めるための検索
(例)
・評価・評判の確認 : 「〇〇〇(商品名) 口コミ」「×××­ 評判」
・ランキング・比較 : 「おすすめ 加湿器 2024」「ダイソン シャーク 比較」
・価格調査 : 「プロテイン 最安値」

 

さらに、「目的のない」目的もあります。

5 楽しむ 暇つぶし(Entertainment)

特定の情報が必要なわけではない時間つぶしのための検索
(例)
・娯楽の消費: 「面白い動画」「猫 画像 癒やし」
・インスピレーション: 「リビング インテリア おしゃれ」「キャンプ飯 レシピ」
・SNS的な探索: 「トレンド」「〇〇〇(芸能人名など) 最近」

 

冒頭に書いたように、AIの登場によってSEOは大きく変化しています。従来のキーワード中心のSEO対策だけでなく、AIO(AI最適化)という考え方が重要です。

 

AI時代のショッピング検索とSEOの変化

●検索行動の変化 : ユーザーはキーワード検索だけでなく、生成AIによる対話型の検索(例: 「快適で見た目も良いランニングシューズを教えて」)を利用するようになっている。

●ゼロクリック検索の増加 : Googleの「AI Overview」のようなAI生成結果が表示画面上部に表示されることで、ユーザーが元のWebサイトをクリックせずに情報を得てしまう「ゼロクリック検索」が増加し、ウェブサイトへの流入が減少する可能性がある。

●コンテンツの引用 : AIはウェブ上の情報から最適なものを引用して回答を生成するため、AIに正確に理解・引用されやすいコンテンツづくりが求められる。

●信頼性とブランドの重要性: AI経由での情報収集が増えるなかでも、最終的な購買決定前には公式サイトや信頼できる情報源での最終確認行動が残っており、ブランド名での検索(ブランドSEO)の重要性も引き続き高い。

 

AI時代のSEO(AIO)戦略と対策

AI検索時代に対応するためには、基本的には次のような「AIO(AI最適化)」戦略が有効でしょう。

▲AIに理解されやすいコンテンツ作成

構造化データの活用 : 商品の価格、評価、在庫状況などを検索エンジンやAIが理解しやすいように、構造化マークアップを導入する。

▲明確な情報提供

商品の特長、メリット、利用シーンなどを明確かつ簡潔に記載し、AIが回答を生成しやすくする。

▲専門性と信頼性の構築(E-E-A-T)

Googleはコンテンツの品質を重視しており、いわゆるE-E-A-T、つまり「専門性」「経験」「権威性」「信頼性」が高いコンテンツはAIにも評価されやすい。対策として、専門家によるレビューや詳細な情報を提供する。

▲ロングテールキーワードと会話型クエリへの対応

従来のワンワードだけでなく、会話形式の多様な質問(ロングテールキーワード)に対応するコンテンツを充実させる。これにより、ユーザーの複雑なニーズにAIが応える際に参照する可能性が高まる。

▲広告戦略の見直し

AI検索結果にも広告が表示される傾向があるため、オーガニック検索だけに頼らず、Googleショッピング広告などのWeb広告戦略も併せて検討することが重要。従来のSEO対策(キーワード配置、内部リンク設定、表示速度改善など)も引き続き重要だが、これからはAIを意識したコンテンツ設計とユーザー体験の向上が成功の鍵となる。

 

AI時代の2つの購買パターン

個別の買物については、2つの発展の可能性があるのではないかと思っています。

(A)1つはAIオリエンテッド

chatGPTが自前のウェブブラウザーを発表しましたが、これはあらゆる行動の入口がAIのトップページになるという方向性だと思います。

つまり、あるときから多くのPCユーザーのスタートページが「Yahoo!→Google」に変化したように、今度は何をするにもAIのトップページからスタートするようになる。

そして、買物も自分のメインAI=エージェントに対して「〇〇を買いたいけど、どうしたらいい?」と質問すると、AIがニーズ確認を返したのち、数点の商品をレコメンド。そのなかから1つを選んで買物をして終わり、というものです。

 

(B)もう1つはバックグラウンドAI

例えばAmazonや専門店のECサイトを訪問し、クエリーボックスなどに「〇〇〇」と買いたいものを入力する。すると、背景でAIが働いてユーザー好みの商品をコーディネートしてくれる。それに満足したら購入する、というものです。

 

──2025年12月現在、どちらになるかはわかりません。

しかし、もしもパターンAになるとすると、長く続いたGoogleテイクスオールの時代が終わることになるのです。

これはとても大きな変化であり、衝撃ですね。

 

 

 

 

 

製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。

本コラムは、ものづくりの現場での気づきや日々の雑感、製造業のマーケティングや販路開拓に関するノウハウなどをお伝えするものです。 お気づきのことやご質問、ご要望などがありましたら、お気軽にメッセージをお寄せください。

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