有効なマーケティング調査とは<1>
先日まで、マーケティング調査に対する否定的な話ばかりしてきました。
けれど、すべての調査が役立たずではないのです。
本記事では、有効なマーケティング調査の手法についてご紹介します。
●有効なマーケティング調査手法
(1)インターネット
(2)行動観察
(3)テストマーケティング
(4)アイトラッキング
(5)R&S
さて、最初にマクラを振っておきます(落語か!)。
長く女性対象のグループインタビューをしている人が、「女性には『昨日、何を買ったか?』『今朝、何を食べたか?』のような具体的な質問以外は無意味」と述べています。
ちなみに、この人自身も女性です。
「どういうものが好きですか?」のような質問をすると、考え出してしまい、しかし自分でも答がわからない、という状況に陥るそうです。
そうなると、理詰めでマーケティング調査結果を見ることも虚しくなってきますね。
では、役立つマーケティング調査をひとつずつ、見ていきましょう。
(1)インターネット
・ネット調査
いまではネット経由で簡易に、低コストでマーケティング調査をすることができます。
しかし、ポイント目当てでパネルを勤める人が多く、その真偽はいかほどかと思います。
企業によっては、アンケート調査のスタイルをとりながら、実際はより多くの人に商品を見てもらう機会をつくったり、メールを送りつけるきっかけにしたりという形で活用しているところも少なくありません。
コストが低くても、質も低いなら、やはり活用はしにくいですね。
・行政、協会の白書、統計データ
人口動態や展示会の開催数など、基本的なデータを調べるのに向いています。
自治体のサイトや、当業界の協会などを訪ねると、企画書などの基礎データに活用できる調査結果が置いてあります。
関係省庁が開示している白書や〇〇総研のレポートなどの調査資料はとても役立ちます。
さらに、日経系などの有料データベース、図書館資料、業界専門紙誌、書籍を合わせると、どんなニッチな市場でも概要が見えてきます。
そのほかにも、業界のリーダー企業の商品政策、メッセージ、価格を調べることは有益です。
けれども、企画を評価できるプロの人は、こうしたデータを企画書の根拠にしている部分を無視しますね。
・SNS/ウェブ・サービス
SNSは、いわゆるソーシャルリスニングですね。
これは、けっこう根気が入りますが、無防備な人の本音を聴くのにはうってつけです。
ただ、これも「炎上させているのはネット利用者の0.5%」という理論に見られるように、変わった人の意見ほど目立つので、あくまでご参考ですね。
ウェブ・サービスとしては、たとえば月間検索回数でニーズのボリュームを知る、口コミサイトやQAサイトで人々のお悩みポイントを知る、Amazonやhontoで書籍テーマの売れ筋を見たり、レビューを読む、などですね。
・クラウドファンディング/ヤフオク、メルカリ
クラウドファンディングに新商品を提示し、どれほどのニーズがあり、反応があるか、目標金額を達成できるかを試す方法です。
ヤフオクやメルカリなどでは、ニーズがあるかどうかを調べたい商品を出品し、ニーズの有無、どれくらいの価格で売れるか(売れないのか)を調べます。
写真や表現によっても反応は変わってきますので、工夫も注意も必要ですね。
以上のインターネットを使ったマーケティング調査では、その有用性は依然として疑問符がつくのですが、何しろ低コストですので、活用してみてもいいのではないかと考えるわけです。
(2)行動観察
あなたの娘さんに彼ができたら、言ってあげて欲しいんですね。
「男が何を言うのかではなく、何をするのかを見なさい」と。
口でだったら、いくらでもカッコウのいいことを言えるのです。
実際に、どう行動したかが肝心なのです。
ということで、調査対象が何を回答しても信用できませんが、どう行動しているのかはウソをつきません。
大手企業が取り入れていて、しかし中小企業でも可能、そして実効性のあるマーケティング調査形態が観察調査です。
例えば、洗剤メーカーが一般家庭を訪問して洗濯の様子を観察・記録させてもらう。食品メーカーが毎日のメニュー写真を撮って送ってもらう。
産業機械メーカーなら、既存機種を使用する現場作業の流れを定点ビデオカメラなどで撮らせてもらう…。
ユーザーは、ご本人たちも気づかない改善点や希望、顕在化していない新たなニーズを問わず語りしてくれる、というしかけです。
この調査がよいのは、ふだんは接点のない自社の開発・設計部門の人とユーザーを、映像でダイレクトに結びつけられるところ。
そして、予算に応じた適切な規模での調査が可能ですから、担当者が自ら出かけるならコストはほとんどかかりません。手土産代くらい。
調査映像は1本でも、100本でも、そのスケールと本気度に応じた効果が得られることでしょう。
ただし、ベタ撮りした動画ですので観るのに時間がかかるところが欠点なのですね。
それを逆手にとった調査活動を行っているのが無印良品です。
商品開発に際し、一般家庭の室内を撮影した“写真”を集めて眺めるだけ。
そこから、生活する上での不便やニーズを見出し、それを埋める商品開発を着想する、というのです。
生活者がゲームソフトの置き場所に困っているようなら、収納ラックをつくれば売れる、というようなことですね。
動画をビデオ撮影するより、調査の実施も活用もラクですね、そうとう。
無印良品の主力である雑貨分野にかぎらず、応用できるのではないでしょうか。
同社では、つくって欲しい商品アイデアを提案するサイト“空想無印”や、ご意見箱を設けている“くらしの良品研究所”などを通じて、ユーザーからの意見を直接集める努力もしていました。
また、新規出店に際しては、1万円でできる情報収集“調査”を行なっています。
それはタクシーに乗車して該当商圏を走り回り、土地のポイントやお客の流れについてあれこれ教えてもらう、というもの。
そのタクシー代が1万円。手軽なマーケティング調査代ですね。
(3)、(4)、(5)は、次回に譲ります。お楽しみに!
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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