展示ブースの設計法
ブースを設計・デザインする、というと「そんな専門的なことまではできません」とお思いになるかもしれません。
しかし、設営業者さんは設計、施工・設営のプロであって、マーケティングの専門家ではありません。
業者さんに依頼するとしても、肝心なところは協業するくらいの心構えが必要です。
そして、予算がない、または出展慣れしてきたら、「基礎小間」✳︎だけを発注して、あとは自社スタッフでやる意気込みがほしいところです。
(✳︎基礎小間<コマ>=主催者が提供するオプションサービス。ブース面積の上に、システムパネルを組み、床にパンチカーペットを敷いたところまでの基本セットのこと。受付台や椅子、展示台、社名表示などが含まれることもある。)
●ブースの種類
大きく分けると、システムブースと木工ブースの2種類があります。
・システムブースとは、独オクタノルム製などの製品で、パネルを金属の柱に差し込んで組み立てるものです。住宅建築でいえば、プレハブ住宅のようなものです。
・木工ブースとは、大工さんや経師屋さん(?)などの職人さんの手による自由度の高いブースです。こちらは、たとえるなら注文住宅のようなものです。
両者を比べますと、木工ブースは自由度が高いぶん、費用もかかります。
木製のため、大きなブースになると「トラス」という金属の柱で補強する必要も出てきます。
曲線豊かなデザインや企業ブランドで集客する大手企業のおしゃれな木工ブース。
これに対して、メッセージ力で勝負する中小製造業は、とうぜんシステムブースでじゅうぶんです。
●近年の展示ブースの傾向
展示会場を訪れて感じるのは、最近は上部空間を有効利用している展示ブースが増えたということ。
(※上部空間とはシステム壁の高さ(2.4〜2.7メートル)より上の部分を指しています。
展示会には高さ制限があり、3.6メートルまでという規制が多い。つまり、2.4メートルから3.6メートルまでの空間を活用するということです。)
深く考えずに展示会に出ている会社は、設営業者がやり慣れている既存ブースデザインの選択肢の中で出展をつづけているだけ。
そうすると、「上の空間を生かす」という発想が入ってこないのですね。
上記のシステムブースでも、上部へ連結して伸ばし、LEDで照らせば相当目立つブースができます。
●展示ブースをデザインする
さて、ではどうやって来場者に見つけてもらえるブースをつくるか。
先述の基礎コマがあれば、あとはタペストリーやポスターを貼ったり提げたりし、実機を置けば格好はついてしまいます。
展示会前日の搬入日に2〜3人で作業すれば、問題なくできるはずです。
つまり、タペストリーなどを印刷した段階で、ブースの体裁はできあがっているのです。
成否を分けるのは、タペストリーの文字が通路から、または遠くからも読めるのか、そして、そのメッセージは有効なのか、ということです。
支援先企業が展示会出展する際に、弓削がいつも描いているスケッチ例を掲げておきます。
■展示ブースのスケッチ例
↓ 1小間のパターンです。
↓ 2小間のパターンです。
↓ 1小間または共同出展のパターンです。
こんな風に描いて社内で計画、共有し、搬入日のマニュアルとして使うと便利です。ご参考にしてもらえればありがたいです。
●展示ブースの導線を計画する
2小間、3小間とブースが広くなっていくと、通行者の視線をどう受け止めるか、ブース内の動線をどう計画するかなど、レイアウトはちょっとむずかしくなってきます。
これも、1小間出展で鍛えていけば、それほど悩まずにできるようになるはずです。
実際に支援先企業の担当者さんも、最初は弓削が描いたサムネイルを見て「へぇ、なるほど!」と言っていたのに、2年もすると自分で計画を立てられるようになっていきます。
●展示ブースは茶室か
弓削は歴史好きなので、千利休や織田有楽斎などの逸話に触れたりしています。
そうすると、「限られた空間を磨き上げ、お客様を迎え入れる」という価値観において、茶室と展示ブースには共通点が多いように感じられて仕方がありません。
たとえば、愛知県犬山市に残る織田有楽斎の茶室「如庵」を見ると、遠近感を崩す斜めのラインや段違い、筋違いのインテリアなど、狭さを広く見せ、お客様を奥へと誘うための工夫が満ち満ちています。
変化のある空間を供することで、お客様を自然に誘導・誘引する──。
展示ブースを構築しようとする私たちと、おもてなしの本質は同じですね。
だからこそ、日本の展示ブースは世界でも最高品質なのです。
ありがとうございます!
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製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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