企業スローガンを勝手に採点します

企業スローガンを勝手に採点します

7●企業スローガンを評価してみた

 

かつて、ディスカウントストア・チェーンの広告で、「暮らしを豊かにする」というものがありました。

友人のクリエイターは「ディスカウントストアが“豊かにする”って言ってもなぁ」という反応でした。

モノがたくさんあるからって豊かではない、という気持ちだったと思います。

 

一方、私はこう考えました。

品ぞろえを言うなら、百貨店のような業態も同じ(いまならアマゾンですけど)。

これにたいして、ディスカウントストアのウリは低価格、触わって、選んで買えること。

だから、同じ予算で、普通の店より多くの商品(雑貨や家具など)が買える。

楽しんで買物ができる、そしてより便利な暮らしができる、だから豊か。

そういうことだと解釈しました。

 

キャッチコピーらしく書くという点でいえば、

「暮らしを豊かにする」よりは、

「豊かな暮らしを提案する」のほうがいいですね。

 

でも、「暮らしを豊かにする」という企業スローガンでは、いずれにせよチェンの強みである“安さ”がいまひとつ伝わりません。

そこをわかりやすくすると、こういう事例になります。

「お、ねだん以上。ニトリ」   ニトリ

“豊か”では一部の人にしか伝わらなかった“安さ”のメリットが、これで明解になりました。

 

「わけあって、安い」      無印良品

こちらもわかりやすい。でも、むしろこちらは「ウチは、安いだけじゃない(プロダクトデザインがシンプルでおしゃれ)」という気概が隠されています。

 

さらに、

「激安の殿堂」        ドン・キホーテ

身もフタもない! でも、ドンキは実際にはそれほど安くはなく、へんなモノを探す楽しみのほうが大きいかもです。

 

一方、“好きなモノに囲まれる”メリットを立たせるなら、

「暮らし感じる、変えていく」  P&G

のような書き方になります。

ただ、これは響きが翻訳調であり、心に触れてくる言葉ではない気がしますね。

 

安さと付加価値などいろいろ入っているのが、

「キレイと元気・安さ毎日」   サンデーズ

ちょっとセワしない、詰め込み過ぎの1文ですね。

やはりメッセージはどこかに絞り込む必要がある、とわかります。

 

「新しい今日がある」     セブンイレブン

シンプルな表現ですが、新鮮さと、毎日来店する価値をご用意しています、といういくつかの意図が込められていますね。

心に刺さるかどうかは別として、上手な文章表現であるといえます。

 

だじゃれを生かしているのが、

「あなたとコンビに」   ファミリーマート

「しあわせいかつ」    マルエツ

 

そして、秀逸だと思ったのが、

「くらしに、ららら」カインズ

                    ( [ララランド]か! )

いや[ららぽーと]、[LaLaテラス]もある!

みんな、「ららら…」が好き?

 

なにも言っていないような能天気さでありながら、楽しさが伝わり、覚えやすく、親しみやすい。リズム感もあって、好感が持てるかもしれません。

 

8●中小企業の企業スローガンはどうでしょう

ここまで、有名企業の企業スローガンについて、見てきました。

次は、実際に使用されている中小製造業の企業スローガンを、同様の観点で勝手に審査、評価してみたいと思います。

 

a 「磁石で夢を創造する企業」  N社(磁石メーカー)

「夢を創造する」とは、ふわっとした表現ですね。

ずっと磁石をつくりつづけてきた会社にとって、「磁石に何ができるか」を考えて極めると「夢だ!」となったりします。

これは、別のものをつくりつづけている会社さんでも同様の傾向があります。

企業スローガンとしては、より具体的な価値やソリューションに言及するほうがよいでしょう。

 

b 「試作から量産までの受注生産」 F社(ブラシの製造メーカー)

試作から量産までを請け負う会社はたくさんあります。

しかし、一貫生産だからといってお客様は喜びません。一貫生産であることからメリットが生まれなければならないのです。

たとえば、緊急時も対応可能です、トータルコストを削減できます、など。

企業スローガン内に、それら一貫生産によるお客様のメリットを明示するか、あるいは「どんなブラシ」(カテゴリーや特長)を入れる方向で考えるほうがベターでしょう。

 

c 「産業用マーキングのエキスパート」 U社(スタンプ機械メーカー)

工場内でのプリンタやスタンプをつくっている会社です。“産業用マーキング”でピンと来る人向けの商品ですので、説明不足という批判は当たりません。

むしろ、メッセージでお客様を絞り込む格好になっているのでムダがなくてよいと思います。

“エキスパート”はやや安直ですので、ここに強いキーワードを持ってこられるといいですね。

 

d 「フォグエンジニア」   I社(霧発生装置メーカー)

真夏の野球場で選手を冷やしている霧発生装置などを製造している会社さんです。

キーワードとしてはフォグよりも、「霧」やスプレーのほうがイメージしやすいかもしれません。

霧で○○を解決、とか、○○を実現、的なソリューション訴求のほうがいいでしょう。

または、「冷霧で猛暑を蹴散らします」のように造語(冷霧)をつくってみるのもいいですね。

つい「霧の魔術師」のような企業スローガンになりがちなところを、踏みとどまって頑張ったと思います。

 

e 「太陽光の専門メーカー」 S社(照明灯メーカー)

太陽光発電がらみかと思いましたら、“人口太陽光”の照明器具なのです。

そういう点では誤解を招く表現ですね。

むしろ“日差し”や“自然光”というキーワードを使うほうがいいでしょうか。

紫外線を発生させて機器類の耐候・褪色性をテストするような機器であれば、ニッチで確度の高い市場がありますし、そちらに触れたいところです。

 

f 「アナログを極める」   A社(電機メーカー)

逆張りの社業ですね。

大勢がデジタルに傾いてしまったとき、「アナログでないと、これはできない」機能があると優位な独占市場となったりします。

どこら辺のカテゴリーで「極める」のか、もう少し具体的なキーワードを入れて絞り込むと反応がよくなるかと思います。

 

g 「死角に気配り」     K社(ミラーメーカー)

“死角”というキーワードは抽象的ではありますが、出会い頭の事故や万引き防止などをすぐにイメージでき、効果的です。

もう少し長めの文章となってもいいので、具体的なアイテムワード(ミラー、鏡)を入れるべきでは? とも思いますが、こうも短くて強いと記憶に残りやすく、拡散していくのかもしれません。

 

いかがだったでしょうか。中小企業の企業スローガンをつくったり、言及したりする人はいませんので、新しい情報もあったのではないでしょうか。

企業スローガンに関する記事は、まだつづきます。

 

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「キャッチコピーの極意」(明日香出版社)

 

 

コピーライター、製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。

 

本コラムは、ものづくりの現場での気づきや日々の雑感、製造業のマーケティングや販路開拓に関するノウハウなどをお伝えするものです。 お気づきのことやご質問、ご要望などがありましたら、お気軽にメッセージをお寄せください。

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