企業スローガンのつくり方

企業スローガンのつくり方

5●企業スローガンのつくり方

 

商工会・商工会議所様でキャッチコピー講座を実施するときも企業スローガンのつくり方について触れるのですが、そのノウハウやユニークな成功事例に対する反応はとても大きいものがあります。

では、企業スローガンはどのような手順でつくっていけばよいのか

 

基本は、「ターゲットの中核に対して具体的な価値の提案をすること」です。

ですから、商品の販促キャッチコピーと同じように考えていけばよいと思います。

つまり、あなたの会社が提供できる価値を言葉にすればいいのです。

 

キャッチコピーの書き方といえば、「何を言うか」「どう言うか」の2段階で考える、この「何を言うか」が重要、というお話をいつもしています。

何とは、あなたの会社の価値、強み、ウリです。

 

つまり、商品単体ではなく企業全体にとってのユニークなウリのポイントを突き止め、語りつくすことが企業スローガン作成の核となるのです。

そう考えると、企業スローガンのあり方も自ずと見えてくることと思います。

その過程を通して、企業スローガンは、次の効果をもたらします。

・ウリ、強みを伝える効果
・ターゲットを絞り込む効果
・ひいては、販路開拓につながる効果

 

たとえば「企業スローガンの役割を考える」で事例にあげた

「計量・包装・検査システム」  (株)イシダ

これは、企業が提供できる商品、付加価値のメニューになっていますね。

 

また、次の事例もありました。

「Ptセンサーのトップメーカー」(株)ネツシン

“Ptセンサー”が何かがわかる人限定のメッセージになっています。

すなわち、コミュニケーションの相手を絞り込んでいます。

 

こうしたメッセージを書くうえで整理して欲しい要素は3つです。

1 対象者      ……(例)〇〇業の方、〇〇工場へ
2 困りごと、課題  ……(〃)歩留まりの低さ、電力料金の高さ
3 解決方法     ……(〃)こうして解決します

 

これらの要素を3つ全部、または2つていどを放り込み、次のように書きます。

「〇〇でお困りの〇〇の方へ、〇〇で解決します。」

あとは、これをカッコつけて言うか、ストレートに言うかていどの違いです。

カッコいいと思われても売上にはなりませんので、誰にもずばりわかりやすく、伝わりやすく書くほうがいいでしょう。

 

キャッチコピーの書き方にお悩みでしたら、これを1冊読めばガラリと解決します。
宣伝になって恐縮ですが、本当です(^^;)。

「キャッチコピーの極意」(明日香出版社)

 

6●企業スローガンを人材採用のツールとしてつくる

 

さて、企業スローガンには、もう一つの効用があります。

それは、共感してくれる有意な人材に発見してもらうフラッグ(旗印)としての役割です。つまり、

・人材採用できる効果

 

中小企業では慢性的な人材難があります。

この目的においては、商品のキャッチコピーとは異なるアプローチで、共感できる企業スローガンを作成していく必要があります。

考え方や社会的価値、将来像などを表現するのです。

 

一つ、事例をご紹介します。

静岡県でキャッチコピーのセミナーをしたときにご相談いただいた建設会社さんは、「大きな案件も請け負っていて技術には自信があるが、若手人材はそれを知らない」という人材採用のお悩みでした。

聞けば、近県の誰もが知る巨大な橋も施工しているとのこと。

それを聞いて思ったのは、まさに大成建設の「地図に残る仕事」だなということ。

けれど、それをパクるわけにはいきませんので、次のような企業スローガンをその場で書きました。

「〇〇建設の作品は、宇宙から見える。」

建築物を、あえて作品とすることでアートな雰囲気を醸し出そうとしていますね。

 

もう一つの手法が、組織を上げて企業スローガンと向き合うやり方です。

つまり、「我が社の企業スローガンを考えてください」と社内公募をして全社員にお願いするのです。

弓削は、支援先で企業スローガンをつくるとき、事情が許すなら社内公募を提案しています。

社員さんは2人でも、100人でもいいのです。

もちろん、コピーライターならぬ社員の方がたから、そのまま使えるキラリと光る1行が出てくることはなかなか期待できません。

それでも、つくっていただいた企業スローガンの案を一覧してわかるのは、皆さんが同じ方角を見ながら仕事をしているのだなという現実。

なぜなら、各人がバラバラに考えているというのに、同じキーワードが頻出しているのです。

まるで最大公約数のように特定のキーワードが浮き立って見えてくる……。

 

日々、取り組んでいる社業ですから、そこには的を射たキーワードを見出すことができます。

そして、そこが社員たちが顔を向けているエリアなんだな、とわかるのです。

経営トップと企画スタッフ、そして私との意図とズレがなければ、それらのキーワードを元に企業スローガンを策定することができます。

 

実例をご紹介します

東京・日本橋にある、弓削の支援先企業に食品素材メーカーがあります。

この会社の社業は、ペクチンという食物繊維の素材を、プリンやゼリーなどのデザートに添加しやすいように加工する技術を磨き、食卓を笑顔に、豊かにしている、というもの。

こちらの会社で、“全員で書きましょうプロジェクト”を実践したところ、次のような3つのキーワードが発見できました。

素材、技術、笑顔

まさに、社業に裏づけされたキーワードが発掘できました。
(食品素材を、添加しやすい形式に加工する技術、デザートで子供たちが笑顔になる)

これを元に、私が書いた企業スローガンが次です。

「素材×技術=笑顔2

こうして、自動的に企業スローガンができてしまいました。

 

あなたの会社でも、ぜひ試してみてください。

そこには全社の意思があり、未来の新入社員にも共感してもらえる価値認識があるはずですから。

できあがった企業スローガンは少々、無骨で荒削りなものかもしれません。

でも、それでいいのです。

その1行こそが、いま胸を張って掲げるべきあなたの会社の企業スローガンなのです。

 

そして、そして、この手法のもっともよい点は、企業スローガンのアイデア出しをしながら、社員さんの一人ひとりが、あらためて「われわれは何者なのか?」「他社に負けない価値ってなに?」「10年後はどうなっていたいんだ?」と、真剣に考える機会ができるというところです。

別の言葉でいえば、“経営者の視点”で会社を見つめ直す体験を持つということ。

企業スローガン策定のイベントを通じて参加意識が醸成され、そして社員のうちの何人かは、まるで経営者のような意識を持って毎日の業務に取り組んでくれるようになる……かもしれないという効果です。

一人ひとりの意識がすこし動くことで、企業の活力は大きく変わります。

そのスタートボタンとして、企業スローガンの策定を利用する、というアイデアなのです。

 

次回は、実際の企業スローガンの評価(ダメ出し?)をしたいと思います。
ぜひ、チェックしてみてください。

 

 

コピーライター、製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。

 

本コラムは、ものづくりの現場での気づきや日々の雑感、製造業のマーケティングや販路開拓に関するノウハウなどをお伝えするものです。 お気づきのことやご質問、ご要望などがありましたら、お気軽にメッセージをお寄せください。

ものづくりコラムcolumn