中小製造業はニッチな市場で勝負する
中小機構様のご依頼で岩手県の新商品開発相談会に行ったときのことです。
南部箒という高額のホウキを製造しているT工芸さんからのご相談をお受けしました。
そのホウキは1本10万円くらいする超高級品。
(さすがにそれはバンバン売れることはないだろう)と思いましたが、受注残を抱えているというのです。
その背景には、和室の細かなホコリもキレイに掃ける毛先のため富裕層にファンがいること、製作にとても時間がかかるのでバックオーダーを抱えてしまうこと、がありました。
結局、ニッチな市場、ユーザーもいろいろということになります。
ただし、半世紀後も安定した市場性があるかと問われれば、YESとは言えないでしょう。
また、ウチの近く(台東区寿町)で1本8,000円するビニール傘(!)を製造しているWという会社さんもあります。
園遊会で使用された透明なビニール傘を「縁結(えんゆう)」とネーミングして製造・販売。
こちらも大人気商品となっています。
園遊会の「園遊」をそのまま使わずに、当て字にしたところに工夫が感じられますね。
(皇室への遠慮があるのです)
いま私が使っている爪切りは、新潟のS製作所さんによる切れ味抜群の逸品。
同社工場見学をしたあと、アウトレットショップでお得に買いましたが、それでも6千円くらいします。
(↑トップの写真が、それです。)
その他にも、歯磨き不要で1本1,000円の歯ブラシ。
抗菌性のある銅製で、16,400円するおろし金。
珪藻土でつくられ、1枚15,000円のバスマット。
羽生結弦さんご愛用の1枚12,000円するマスク。
などなど。以上のような商品は、なんでもよいなら100円ショップにもありますよね。
こうした高級商品へと展開した会社さんは、どこかで思い切った路線転換のタイミングがあったものと思います。
一般に、大手企業で国民全員がお客様というビジネスであれば、過半数のユーザーに選ばれる最大公約数的な商品をつくらざるをえません。
カドのとれた、どこかの先行品の模倣ということもあるでしょう。
そして、その商品の戦場はナショナルチェーンや通販ポータルであり、価格のやすさや販売ネットワーク、あるいはブランド認知力で勝負が決まります。
当然、利幅は少なく、薄利多売の様相を呈してくるでしょう。
それでも勝ち抜けるのは、資本力に勝る大手だからこそ。
しかし、そこは中小製造業が戦うべき土俵ではありません。
われわれ中小製造業の勝機は、多くの人にとっては「こんなもの誰が買うの?」とあきれられるような商品をつくるところにあります。
ごく一部の限られたユーザー、会社に向けて、「ぜひ売って欲しい、つくってくれてありがとう!」と言ってもらえるようなニッチな商品をつくってこそ、大手と違うフィールドで勝つことができるのです。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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