プレスリリース掲載のコツ2
さて、プレスリリースの切り口を考えるステップについて見ていきましょう。
あくまで一般的にですが、新製品が画期的であれば、業界紙誌には取り上げてもらいやすいといえます。
・業界初、日本初、世界最小・最軽量、ユニークな工業デザインやネーミング、など
そして、投入された開発技術に意義があるなら、そこを強調します。
・特許取得、あの技術を転用、社会生活を革新する、など
あるいは、もう少し視点を引いて、大枠から語るのはどうでしょうか。
・業界での位置づけ、別分野へ与える影響、国家としての意義、など
反対に、企業に引きつけて語るのはいかがでしょうか。
・リーディングカンパニーとしての責務、事業部としての意義、シェア拡大に貢献する、など
さらに、人物にフォーカスしていくプロジェクトXのようなアプローチ方法もあります。
・二世経営者ならではの苦悩、なぜ開発を思い立ったのか、苦節20年で開発を、など
上のような連環をベースに発想してみてはいかがでしょうか。
社会問題をときほぐして掲載される
とはいえ、前回も言いましたように「新商品出ました」「新技術できました」ではなかなか掲載されない。
では、どうすれば掲載されるか。
そのひとつの方向性が社会問題をときほぐす、というものです。
社会問題とは、高齢化社会、少子化、環境問題、不況、いまであればコロナ禍、ウイルス除去、医療従事者へのケア、などです。
マスメディアの使命は、さまざまな公共の利益に貢献することですから、一私企業の利益にのみ資する報道はしづらい。
純粋な広告と記事、番組とはきっちり分けなければいけないですね。
(ところが、この線引きがあいまいなほど、企業は広告費を払ってもいいという。
記事体広告やインフォマーシャルが幅を利かせる理由がここにあります。
しかし、これは広告が取れる反面、「宣伝と記事の境目があいまいな媒体」として評価や信頼を下げていくことになるのです。)
そこで、一度、本業をはなれて、折おりの社会問題を解決するカタチでイベントや企画を考えるのです。
たとえば、単純にいえば工場見学でもいいですし、近隣の方たちを集めてバーベキュー大会をしてもいいのですが、そこへ社会問題をからめるとどうなるか。
金型メーカーが、和菓子文化を守るために和菓子づくり教室を開らきます、となります。
家具メーカーが、(日頃、コミュニケーションが取れていないであろう)父娘を対象に蕎麦打ち教室を開催します、とか。
夏休みの自由研究おたすけ教室で、大工さんみたいなテクニックを伝授します、のような。
あるいは食品メーカーが、親子でできるとんかつ料理教室、家でできる〇〇教室、のようなですね。
有名な成功事例を紹介しますと、東京・墨田区の「配財プロジェクト」があります。
これは、地域の子供達を集めて、工場の廃材を使ってペンケースや万華鏡などの文房具をつくるワークショップを開らくというものです。
「配財」というものの、捨てる「廃材」ですね。
廃材を再利用しますからリサイクルなので環境問題
地域の子供たちを集めますので、失われつつある地域社会の紐帯を強める
ものづくり体験をしますので、ものづくり立国日本の将来を担う人材を育てる
というように、まさに社会問題を解きほぐしっぱなしなのですね。
そのために、このプロジェクトは膨大な回数、メディアに取り上げられており、浜野製作所さんをはじめとする墨田の製造業の存在感をいやがうえにも高めているのです。
「社会問題にからめてプレスリリースを書きましょう」と考えたとき、そのひとつの要素が「環境対応」であり、これは現代ではあらがいがたい合い言葉ですね。
環境製品を展示会に出展した支援先企業は、業界紙はもちろん、日経本紙にすぃーっと取り上げられました。
たいへんあざといことを書くようですが、環境対応製品を開発したり、自然環境の保護へ貢献したりすると、たとえ研究開発の段階であっても、メディアは注目してくれます。
まことにいやらしいことを書くようですが、恵まれない子供たちのためのイベント、絶滅危惧種動物保護への取り組み、社会的弱者に手をさしのべる、などは、やはりメディアが反応しやすい部分です。
テレビのニュース番組でも、コロナ禍で客を失った飲食店や旅館やホテルの苦境は、ずいぶん紹介されていました。
こうした方たちに何らかの手を差し伸べることができれば、ニュース性が出てくるでしょう、本当にあさましいようなのですが。
さて、あくまで基本的な考え方ですが、ウチの会社、商品をどのように料理したらよいかのリストを載せておきますので、当てはめて考えてみてください。
プレスリリースの切り口10の視点
①優位性
日本初、世界初、日本一、最も〜、辛い、大きい、長い、高い、安い、史上最年少・最年長、最北端、ギネス、番付・ランキング、記録、最先端技術
②地域性
地方発、地元発、この土地ならでは、地域活性化、来訪者増、日本発が世界で人気、イベント・風習
③継続性
00年連続で達成、00年ぶり、創業00年、記念日
④意外性
無価値が価値に、ビフォアアフター、ギャップ、ユニークネーミング、めずらしい・面白い話題(冬なのに氷!?)、調査・アンケート結果
⑤新規性
ニュース、初めて公開 新しい、新商品・サービス、時流、画期的、募集、プレゼント、新工場、展示会に出展
⑥社会性
社会貢献、弱者救済、被災者保護、ボランティア、匠の技、老舗、節約、伝統工芸、教育、介護、環境・省エネ、高齢化、少子化、高齢者雇用、農業、食の安全
⑦公共性
SDGs、産学官、コラボ、国際的・グローバル化
⑧物語性
感動、元気、笑顔をもらえる、夢、未来、敗者復活・再生、心温まる話、社長の個性・奇行
⑨季節性
四季の催事、年中行事、旬(収穫・漁)、季節限定商品
⑩切実性
避難情報、防災グッズ、助成金、難病、予防接種、伝えないと困る
次回は、媒体の特性を踏まえ、プレスリリースの切り口をどのように発想したらよいかについて書きます。ぜひ、アイデア発想のヒントにしてください。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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