クライアントは成長中のマンション・デベロッパーです。当初は「C.I.についてのアドバイスを」という依頼でしたが、結局は当面のマーケティング戦略をお願いしたいという話に変わりました。
この会社は数年前に東京へ進出、高級マンションを開発・分譲することを主な事業内容としています。依頼があったのは、REITやSPCという言葉が出てきた頃で、マンションを販売するだけでなく、さまざまな形で投資を扱うというビジネスが成功しつつありました。
課題は、首都圏の富裕層に絞り込んで顧客開拓をしたいということと、その富裕層や企業から投資も引き出したいというもの。当然、それにふさわしいブランド価値向上とステイタスの醸成も付随的に必要となるでしょう。
“プチバブル”といわれはじめた現在も、富裕層にターゲットを絞ったビジネスは多くみられますが、「かゆいところに手が届く」サービスやケアがなければ、なかなか彼らを取り込むことはできません。
その前に、どこに富裕層がいるのかを発掘し、コミュニケートしていかなければならない点も問題です。これは、他のビジネスでも共通の悩みかもしれません。さて、ITを活用する部分と、人手を惜しまない部分の両方が求められる、このプロジェクト。どんな戦略を構築したでしょうか。
本件は、一言でいえば富裕層向けマーケティングです。金融資産はIT系企業オーナーや役員、自由業など、ごく限られた層に集中しているといわれています。どうやって彼らにアクセスし、信頼関係を築くか。ここが肝要です。
前提としては、トータル・プロパティ・カンパニーをキーワードに「選ばれた人と共に付加価値を生み出していく」というコンセプトを設定。ただのデベロッパーである、という社内の意識を変えてもらうことから始めました。
ブランディング構築のためにはパブリシティ展開が不可欠と考え、弓削の出版社とのリレーションをたどって米系経営誌「F」のキーパーソン紹介ページに「我が社の挑戦」などのタイトルで取り上げてもらうよう仕掛けました。それを抜き刷りにして営業折衝に生かすというわけです。社内にも良い影響を与えます。
目的の顧客探しでは、過去の顧客データを再活用することはもちろん、新たに媒体として、経営誌、投資誌だけでなく、ベンツ、BMWなどの高級外車オーナーの会員誌、またダイナース、アメックスのカード会員誌などを告知の場として選択。魅力的なオファーにより、会員組織への誘因を行います。(他にも、銀座和光の会員誌、SevenSeas、Nileユs Nileなど高額所得者向け雑誌、メディカル・トリビューン、日経メディカルなど医師向け雑誌、SevenHillsなどのウェブを検討)
こうして人的に、また紙誌から、DMから、ウェブから集められた名簿を、いやな言葉ですが所得や資産高で足切りをしてターゲットセグメントとしての純度を高め、「友の会」組織に囲い込みます。会員には、ロイヤルティと継続性を高めるために、立体的コミュニケーションを仕掛けていきます。
まず会員誌の発行、専用ウェブ開設、メルマガを配信。また、定期セミナーの開催、これはファイナンシャル・プランナーによる講演や資産運用相談会などです。さらに弁護士、税理士の紹介など、個別な人的サービスも。また、会員同士の交流を促すことも付加価値を高める手法です。この辺はマン・ツー・マンの対応が必要となり、省力化がむずかしい、しかしはずせない対応といえます。
日経グループのQUICKなどと提携して株式金融情報を提供、Q&Aを受け付けるなど、役立つ限定的な付加価値情報を発信していきます。そして、顧客たちの指向を知るため、寄せられたはがき、Eメールの本文を、定量だけでなく定性分析を行うのです。これには、ナレッジ・マネジメントソフトを使ったテキストマイニングを活用します。この結果を、再度サービス開発、営業活動へ生かしていくわけです。
注)1.実際にはここに記せないコアな戦術もありますがご理解ください。
2.本件クライアントは不動産業ですが、お世話になった方の関係で受注したものであり、原則的に私が金融・不動産業のコンサルティングを受けることはありません。ご了承ください。